50ism.comトップページへ
50ismインタビュー
50ism 50歳以上限定ポータルサイト50ismトップページ

文字サイズ
大 中 小

50ismインタビュー東京大学名誉教授:板生清氏

50代は一番大事な時期。自分の能力を最大限に発揮するような10年間にして下さい。


50ismインタビュー 東京大学名誉教授:板生清氏 1990年当時、板生氏はNTTの研究企画部長として、ある強烈な思いを抱いていた。それはビジネスやアミューズメントのみに情報技術が使われてるだけでいいのか、という疑問だ。当時からあらゆる分野で盛んな取り組みはあったが、板生氏には確信があった。情報技術を人間の健康や地球環境といったヘルスケアに使うべきだ、という確信がそれだ。つまり人間が中心で人間が操作するに都合のいいヒューマンインタフェイスの概念のみでなく自然や本質を中心に置く概念であるネーチャーインタフェイスの提唱であった。しかし、その確信はNTT内での理解は得られなかった。

「お金にならないし、それどころではない!。時期尚早」。

それが無理解の主原因だった。板生氏は出世コースにいたし、板生氏の部下も羨望のまなざしで見ていた。しかし、板生氏にはもう一つ、強烈な思いがあった。それは、50代というのは一番大事な時期であるという確信だった。

「50歳は80歳に向けた小学生時代のようなもの。つまり、基盤を創る時。40代の延長に使ってはいけないものすごく大事な時期です。」

板生氏はそう語り、こう付け加えた。

「それに時間は有限、時間を無駄にしてはいけません。」 何かを始めるとき、次のチャンスでいいや、と思う人とそうではない人がいる。しかし、そのことを板生氏はこう語る。

「明日でいいや、という考え方では人生が終わってしまいます。」

そして、自身を旅人となぞらえ、大事な50代に長居は無用、と主張した。もちろん、NTT側は、説得を続けた。優秀な人材だけに出て行って欲しくないのだ。改めて、聞く。

「では、例のプロジェクトをやってもいいか?」 「では、例のプロジェクトを本格的に展開できるのか?」 答えは不明。出来ないならば、一番の情けは解放することでは、と丁寧に話した。しかし、この交渉、実は辞めるまでに二年かかっている。立つ鳥、後を濁さず、きっちり納得してもらった上で出て行きたかったからだ。もちろん、リスクは取っている。企業年金を蹴り、割り増し退職金も蹴っている。しかし、東大教授を務めた後、今や東京理科大学の技術経営の大学院の長であり、さらに5年前からNPO法人 WINの会を立ち上げ経営している。リターンを得た。ターニングポイントとなるNTTを辞めた瞬間、それは49歳。まさに50代から、生活は様変わりだ。社畜からの解放だ。企業奴隷は解放されて自由人となったのだ。

板生氏の思いの根本には、「市民技術」への思いが強く存在している。今までの多くの製品は産業技術だった。これを作ったから皆がこの画一製品を使え、という思想が一貫しているのだ。しかし板生氏は言う。

これからは画一ではなく個々の弱者を助ける市民技術の時代だ

市民技術は板生氏の造語だが、板生氏は、今の時代は同じような商品が自動化されて、作られてしまっている、と嘆く。 「ものが売れないのは普及し尽くしたからだというのは全くの嘘。本当に欲しいものが造られていないのだ。個人に目がいっていないんです。」 つまり、市民技術とは、大量生産ではなく、市民の発想で市民が必要であるものとしてつくるもの。

電話を作ったベルの発端は、難聴の奥さんに補聴器を作ろうとしたことだった。トイレのウオッシュレットは痔の患者を救おうとした。ライターの発端は軍人の手の障害に対して、片手で出来るようにということだった。偉大な発明は実は、いきなり全員を狙ったわけではない。まず、身近な誰かを救おうとしていた。板生氏もまさにそうだった。

NPO団体の「トゥモロウ」がある。それは汗が出ない「無痛無汗症」という病気を持つ子供たち親を中心とする団体だ。その団体が2年前の暮れに板生氏に相談を持ちかけたのが発端だった。その子供たちは汗をかかないために暑さでぐったりとしてしまう。何とか救えないだろうか、と。板生氏は博愛主義者だ。一度、聞いたら何とかしてあげたい。

そこで出来たのが、服の中に電子的なクーラーをつけるという発想だった。難しい言葉で言うと、ウェアラブルコンピューター。着ていくと冷やしてくれる。まさに無汗症にうってつけだった。

そして、その商品を欲しがるのは、無汗症の子供たちだけではなかった。今度はこれを使って、シニアに対し、「車椅子で銀座にくり出そう」という計画を実行しようとしている。

板生氏は先を見つめている。板生氏、現在、63歳。今の成功はまさに、50代の時の猛烈なスピード感があるからだ。

「力のある50代は自由人になり自分の能力を最大限に発揮して基盤を作り人生の後半戦に備える10年にして下さい。」

その言葉は深い。
リンク集
板生教授のブログ
winの会